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2025.12.15

なぜ大腸がんは「運動」で再発・死亡リスクが下がるのか― インスリン抵抗性という“見えない原因” ―

日本では、大腸がんは「最も身近ながん」

日本では現在、大腸がんはがんによる死亡数が最も多いがんです。
女性では死亡原因の第1位、男性でも上位を占めており、
その数は年々増加傾向にあります。

つまり大腸がんは、
「一部の人だけの病気」ではなく、
誰にとっても無関係ではいられない病気になっています。


治療後に多くの人が感じる「再発への不安」

大腸がんは、早期発見や治療の進歩によって
長期生存が期待できるがんになりました。

その一方で、治療後には多くの方が

  • 再発しないだろうか

  • これまで通りの生活で大丈夫なのか

  • 自分でできることはないのか

といった不安を抱えています。

実は近年、
「運動」が大腸がんの再発・死亡リスクを下げる
ことが、複数の研究で示されてきました。


運動で再発・死亡リスクが下がるというエビデンス

ハーバード大学の研究グループによる
大腸がんサバイバーを対象とした研究では、

週に6時間以上の歩行などの身体活動を行っていた人は、
再発・死亡リスクが約30〜50%低下していた

という結果が報告されています。

ではなぜ、
「体を動かす」という一見シンプルな行動が、
これほど大きな差を生むのでしょうか。


キーワードは「インスリン抵抗性」

その答えのひとつが、
インスリン抵抗性です。

インスリンは、血糖値を下げるためのホルモンです。
食事をすると血糖値が上がり、それを下げるために分泌されます。

しかし、運動不足や内臓脂肪の増加によって、
インスリンが効きにくい体になることがあります。
これが インスリン抵抗性 と呼ばれる状態です。


インスリンは「血糖」だけでなく「細胞の成長」にも関わる

あまり知られていませんが、
インスリンには血糖を下げる以外に、

「細胞に成長しなさい」「増えなさい」
というシグナルを送る働きがあります。

本来はこれは、
筋肉や肝臓などの正常な細胞に向けられたものです。


高インスリン状態が続くと、がん細胞にも影響が及ぶ

インスリン抵抗性があると、
体は血糖を下げるために
より多くのインスリンを分泌します。

すると血液中では、
インスリンが多い状態が続きます。

この状態では、

  • インスリンそのもの

  • さらに IGF-1(インスリン様成長因子)

といった、
細胞増殖を強く促す物質が作用しやすくなります。

医学的には、

  • がん細胞の増殖が促される

  • 本来起こるべき細胞死(アポトーシス)が抑えられる

ことが分かっています。


大腸がんは「インスリン・IGF-1経路」に特に敏感

重要なのは、
大腸がんはこのインスリン・IGF-1経路に特に反応しやすい
という点です。

実際に、

  • 2型糖尿病(インスリン抵抗性を伴う人)では
    大腸がんの発症リスクが高い

  • インスリン抵抗性の指標が高い人ほど
    大腸腫瘍のリスクが高い

といった結果が、
複数の研究やメタ解析で示されています。


なぜ「運動」がこの流れを断ち切れるのか

運動をすると、筋肉は
インスリンを使わずに糖を取り込む
ことができるようになります。

その結果、

  • 血糖値が下がりやすくなる

  • インスリンを大量に出す必要がなくなる

  • 高インスリン状態が改善する

つまり、
がん細胞に送られる「増えなさい」という信号が弱まる
のです。

これが、
運動が大腸がんの再発・死亡リスクを下げる
非常に重要なメカニズムです。


「激しい運動」は必要ありません

ここで強調したいのは、
激しい運動や特別なトレーニングは必要ない
ということです。

研究で効果が示されているのは、

  • 歩行

  • 日常的な身体活動

といった、
誰でも始められるレベルの運動です。


運動は「治療の代わり」ではないが、「大切な一部」

もちろん、運動は治療の代わりではありません。
医師の治療を受けることが最優先です。

ただし運動は、
再発リスクを自分で下げられる数少ない手段
であることも事実です。


まとめ

  • 大腸がんは日本で最も身近ながんのひとつ

  • 運動によって再発・死亡リスクが下がることが示されている

  • その背景には インスリン抵抗性 という明確な仕組みがある

  • 運動は高インスリン状態を改善し、
    がんが増えにくい体内環境をつくる

「なぜ運動が必要なのか」を理解することは、
再発予防への第一歩になります。

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参考文献(エビデンス)

  • Meyerhardt JA et al. J Clin Oncol, 2006

  • Giovannucci E. Cancer Causes & Control, 2001

  • Sandhu MS et al. JNCI, 2002

  • Ma J et al. JNCI, 2004

  • NCI(米国国立がん研究所)

  • WCRF(世界がん研究基金)

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